bookmemo2017’s blog

読んだ本の記録

★-月の満ち欠け(佐藤 正午 )

★おすすめの本です。

 

 

あたしは,月のように死んで,生まれ変わる――目の前にいる,この七歳の娘が,いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の,三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく.この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は,円熟の境に達した畢竟の書き下ろし.さまよえる魂の物語は戦慄と落涙,衝撃のラストへ.

 

 

会えば会うほどにのめり込み、会わないでいるあいだも現実を直視すべき目を曇らせていたからである。その人の顔は途方もなく美化され、リアルな顔は後方へしりぞく。鼻筋は通っていたのか、仮に思い描こうとしても実像はつかめず、もどかしいほどにぼやけている。新聞のモノクロ写真のように。

 

 

「そう。月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す。そして未練のあるアキヒコくんの前に現れる」

 

おれたちが生きているこの世界、現実はひとつでしょう?幾通りも現実があったら、困りますよね、奥さん。ひとつしかない現実の、確固たるイメージによって、人の知覚体験は「支えられて」いるらしいです。だもんで、ひとつの現実の、イメージとうまく調和できない体験は「追放」される。つまり頭から否定される。なかったことにされる。

 

想いの大切さを知りました。